1952年11月30日VPO/Beethoven:Sym.3"EROICA"。
新年最初に聴く音楽を何にしようか、と棚を眺めていたら、これが目に入りました。

ベートーヴェンの交響曲(2番を除く)をライブ録音ばかりでまとめた全集。余白に序曲挿入。
イタリア・ヌォーヴァ・エラ・レーベルから出された6枚組です。013.6300
高田馬場ムトウで平成元年1月14日に7500円で購入したレシートがはさまっていました。消費税導入直前の時期です。
この曲集の中で最も気に入っているのが交響曲第3番「英雄」またの名を「エロイカ」です。
フルトヴェングラーがウィーンフィル(以下「VPO」と略称)とEMIに録音した52年盤は、私などが語るまでもない、畢生の名盤です。その録音は1952年11月26日・27日と記録されています。
その録音の直後に録音した会場(ウィーン・ムジークフェラインザール)でのライブ録音です。このライブ盤はこのCDから後にも何度も発売されなおしていて音質も改善されているのでしょうが(まだ未整理で断言できません。)、ベートーヴェンの交響曲をこの3番と同じように、「スタジオ録音」と近接した時期に収録されたライブ録音がまとまっている意味で、非常に有難いCDなのです。






久々に取り出してみて、我ながらの保存の良さに驚きます。ラッピングされていたシールはそのままです。盤は日本コロンビアによる日本プレスと明記されていますが、イタリア・レーベルのため逆輸入の形になったのでしょうか。輸入された時点での箱の上からのシールに、さらに黄色い帯をつけてその上からさらにシールしていますが、その二重のシールが両方ともそのままついています。CDの内箱を取り出すのに必要な限度でカッターで切り開いたのでした。
肝心のエロイカの音は、いやー、もう素晴らしいの一言です。
スタジオ録音と近接しているので、オーケストラの音色、テンポは非常に似ています。
第1楽章の終結では、涙が出てしまいました。音楽を聴いて涙の出るのはいつのこと以来なのでしょう。正義は勝つ、英雄は死なない、と巨匠(作曲家と指揮者)が諭してくれたのでしょうか。
ティンパニは宇野功芳氏が不満を漏らしていたスタジオ盤と比べて盛大に音が出ています。ウラニア盤ほどではありませんが。
第2楽章の葬送行進曲では、こんな昔の録音にかかわらず、音色、さらには音楽が何を語ろうとしているのか、が伝わるのは、すごい、の一言です。本当の芸術は、単なる技術(録音再生技術)の発達(あるいは未発達)を超える、と言えます。
第3楽章もスタジオ録音の音色を彷彿させて見事。
第4楽章も。オーボエの歌う前に、間、があります。フルトヴェングラー独特の「間」が、「出た!」と、ライブに居合わせたような驚きと楽しさを提供してくれました。この点について、宇野氏は「新版フルトヴェングラーの名盤」までは触れていなかったこの録音を「フルトヴェングラーの全名演名盤」で掲載していました。「ポコ・アンダンテに入る前の間はあまりに長く、オーボエがとちるのはそのせいもあったのだろう」(同書93頁)とあって、音楽を学び研究している方はキチンと聴いて書けるんだなあ、と当たり前のことに感心しました。素人にとっては、感激できればいいんです、という程度なのですが。
52年スタジオ盤にライブの熱気を加えた、という安易な表現は取れないとは思います。
逆に、このライブ録音は52年スタジオ盤の価値をさらに高く定める役割をしているのではないでしょうか。引き立て役といえばなんですが。。
VPO52年スタジオ録音は100年や200年単位ではからなければこれを上回るエロイカの演奏は現れないのではないか、とひそかに思うものです。それは、オーケストラの感性と技量がピークに達したのが第2次大戦をはさむ時代だと思いますし、考古学者の父のもとで知的薫陶を受けたフルトヴェングラー当人とフルトヴェングラー家の数世代にわたって醸成された知性の到達点、それに世界大戦を体験したという時代と巨匠個人、録音技術・レコードの黎明期でまだ人類が録音に寄り掛かることのできなかった時代性、など多くの要素が奇跡的にめぐり合わせた清華と思うのです。(日本語として未整理でスイマセン。)
本当に久しぶりにフルトヴェングラーの世界にどっぷりはまりました。火が付きそうです。
今日は元旦。今夜は子供たちは私の実家に寝にいき、ヨメはいない。4階建て会館(?)に私一人だけの夜ですから、遠慮いらずの大音量で堪能できました。スチューダーのCDプレイヤーはCDで聴き疲れさせずさすがです。


Comments
思わず唸る記事を拝見いたしました。
このCDは放送音ですが、音は良いですね。
この「英雄」もエネルギッシュかつ彫の深い丁寧な彫刻の施された名演です。
CDは後にTAHRA、MUSIC&ARTS、VENEZIA、ALTUSと出ていますが、NUOVAERAが一番です。
Posted by: furtwan | January 06, 2009 at 05:34 PM
コメントありがとうございます。また貴重な情報をいただきまして感謝します。
棚を探しますと、
TAHRAは、RURT1076-1077が1952年11月30日のコンサートを再現しているようですね。ベートーヴェンの1番とマーラーそしてエロイカ。
ALTUSは、ALT088が、上記1番以外をCD1枚に収めていますね。
ただM&Aは、今回改めてみますと、買いそびれているものがあるようで番号が飛んでいる箇所がありました。これがわかって少々ショックです。このエロイカは見当たりませんでした。やはり検索が容易になるよう日頃からの整理が必要です。
M&AならぬM&Bでディスクを発見しました。MB-4601です。これはTAHRAと同じ内容で同日のコンサート再現の2枚組CD-R盤です。
VENEZIAは、V-1017がやはり同日のマーラーとエロイカを収録していますが裏ジャケの表記が10月30日と誤記されていますね。
他に情報がありましたら是非よろしくお願いします。
Posted by: 安藤誠基→furtwan様。 | January 07, 2009 at 03:47 AM
すみません。M&Aは1950.6.20の演奏でした。
訂正いたします。
M&Bをお持ちとは、凄いですね。
Posted by: furtwan | January 07, 2009 at 12:22 PM
いえいえ、どういたしまして。記憶の交錯はよくあることでして。無理もないと思います。
M&A・CD-711は1952年11月30日の「1番」と、50年6月20日のBPOとのエロイカを収録ですね。M&Aのかなり初期の盤ですね。うちにもあります。安心しました。
Posted by: 安藤誠基→furtwan様。 | January 07, 2009 at 01:08 PM