ノキ弁。
最近、
「ノキ弁」
という言葉を耳にする機会が増えてきました。
「イソ弁」という言葉は知られています。私もイソ弁でありました。
「イソ弁」とは「居候(いそうろう)弁護士」の略称です。
事務所経営者である「ボス弁」に雇用されて給料を受け取って生活している弁護士のことで、ボス弁の事務所に居候しているから「イソ弁」と呼ばれます。
これに対して、
「ノキ弁」。
なんでしょう?
ご想像される方もいるでしょうが、これは
「軒を借りている弁護士」
の略称です。漢字で書けば「軒弁」。
この生態はと言いますと、ボス弁から、
「この机使っていいよ。」
とデスクだけあてがわれていますが、「イソ弁」と違うのは、ボス弁から給料が出ない。
「自分の生活費は自分で稼いで。場所だけは貸すよ。」
と言われているのが、
「ノキ弁」
です。
東京、大阪の都会では増殖しつつあり、地方では、札幌、松山あたりで実例が観察されると耳にしたことがあります。
最近、東京の大弁護士さんと会話する機会があって、ノキ弁の発生経緯についての一仮説をたまわりました。
そもそも最初はイソ弁であった若手弁護士に対し、ある日、ボス弁が
「ボーナスはこれから払わないから、その分は自分で稼いでね。」
と宣告します。
しばらくして、ボス弁が、
「給料カットするけど、足らないのは自分で稼いでね。」
とまた宣告します。
そして、ついに
「給料払わない(払えない)よ。自分で稼いでね。場所代は取らないから。」
となって、
それが最近は、
「うちに机置いているなら(事務所の)経費は出して。」
と言われているそうです。
これは発展的(右肩下がりの)発生型でしょう。
これに対し、昔で言えば、司法研修所の教官が就職先の見つからない新人弁護士を
「1年だけだぞ。」
の条件でイソ弁で雇用して救済していたのが、
「給料払えないけど、机だけ貸すぞ。」
と場所だけ提供する突然発生型もあるのではないかと想像します。
(あ、研修所の教官がノキ弁を発生させている、という意味ではありません。念のため。)
嗚呼、(若手)弁護士残酷時代。
「弁護士」の資格さえ取れば一生安泰、と安心感と勝利感を味わえたのは昔話。
それがいまや「ノキ弁」とは。
ノキ弁の発生は一事象としても、それが、従前の「イソ弁」の待遇にも深刻な影響を与えているようです。
イソ弁の初任給の暴落も引き起こしているというのです。
ノキ弁の発生がイソ弁の給与水準の価格破壊を発生させているともいうことです。
「ノキ弁でもいいんだけど。ん?給料ほしい?じゃ、これだけね。」
と、完璧な買い手市場、らしいです。
そんな時代ですから、若い弁護士さんを
「買い叩いて」
昔なら一人分の人件費で倍、三倍の弁護士を雇って大もうけなんて目論む弁護士も出現して不思議ではありません。
で、当事務所の態度を示さなければいけないでしょうが、
当事務所は従前のイソ弁の給与体系を維持する方針です。(ともかく当面は。)
当事務所は良質のリーガル・サービスの提供を至高の目標としています。
良質のリーガル・サービスには当然良質な人材が必須です。
若く将来性のある若手弁護士を、
安く買い叩く
という態度は決してとりたくありません。
あくまで弁護士としての誇りと生活を維持できる賃金水準を維持することが必要条件と考えています。
ただし、当事務所に就職希望しさえすればそれで足りる、というのではありません。
就職希望者が一人、二人であればまだしも、十人、二十人と増えてくることも想定しています。そのような時代には勤務弁護士採用試験を実施する可能性もあります。一定水準を達成した弁護士にはそれ相応の待遇を。
弁護士業界にも市場経済の当たり前の原則が妥当するようになってくるということでしょうか。
「先生商売」が年々困難となっていき、10年後にはどうなっているか、読みきれないのが当業界のはずですが、
地元の同業者先生方、のんびりしていていいのでしょうか?
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